ナグモクリニック総院長 南雲吉則

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現代版栄養失調に悩む人たち

戦前戦後は食べ物が不足して、飢えた人たちがたくさんいました。栄養失調によって子供は成長できず、大人は体を壊して働けなくなりました。その後、日本経済は飛躍的に発展して豊かな国になりました。今や飽食の時代、周りには美味しい食べ物が溢れています。
そのことによって、私たちは健康になったでしょうか?
逆に太り過ぎによって病気になる人が増加しました。アレルギーや膠原病、原因不明の不調や痛み、そしてがんに苦しむ人たちが後を断ちません。
その原因が「栄養失調」によるもの、と聞いたら驚かれるでしょう。
今回は日本人を悩ます「現代版栄養失調」についてお話しします。

栄養には二つある

お腹が空いたら食事しますよね。食事には二つあります。
一つは私たちの体を作る、いわゆる「血となり肉となる」食事です。これを「必須栄養」といいます。必須栄養は「ビタミン」「ミネラル」「必須アミノ酸」「必須脂肪酸」の4つです。どれも体の中で作り出すことができないので、食事から摂らなければならない栄養です。どれ一つが不足しても病気になりますし、完全に欠乏したら生きてゆくことはできません。
もう一つは楽しみのために食べる食事です。その代表は「糖質」です。糖質は体の中で作り出すことができますので必須栄養ではありません。食べなくても生きていけますが、楽しみのために食べているものです。

糖質を食べても体は作られない

朝ごはんとしてパンにジャムを塗って食べます。お昼はコンビニのおにぎりやカップ麺、ラーメンやうどんを食べることもあります。これらは糖質の塊で、必須栄養はほとんど入っていません。食べればお腹は膨らみますし、エネルギーにはなりますが、体を作ってくれることはありません。
中には晩御飯を食べるのが面倒なので、クッキーやポテチのような袋菓子やチョコレートで済ませている人もいます。これでは必須栄養が不足してしまいます。
採血してみると栄養バランスが崩れ、栄養失調と診断されます。これを「現代型栄養失調」と呼ぶのです。

どうすれば栄養バランスを整えられるのか

では足りない栄養をどのように補充すればいいのでしょう。サプリメントいう方法もありますが、必須栄養の種類は多岐に渡ります。ビタミンだけでもA、B、C、D、E、K。ビタミンBは1から12まであります。必須アミノ酸は9種類、ミネラルは亜鉛・マグネシウム・鉄が代表ですが微量金属も入れると数え切れません。
またどれが足りないか検査するのも大変ですし、摂りすぎも問題となります。
そこで皆さんにお勧めしたいのが「ホールフード」です。日本語では「丸ごと栄養」または「完全栄養」といいます。生物が生きている姿のまま頂くということです。

すべての栄養を補充してくれるホールフード

ではホールフードの例をお示ししましょう。穀物なら玄米や雑穀です。これらは地面に蒔けば芽が出て成長します。すなわち生物が生きてゆくうえで必要なすべての栄養を備えているということです。
イワシやシシャモも生きている姿のままですよね。皮ごと骨ごと頭ごと食べればホールフードです。シラスや桜エビをトッピングにして召し上がるのもいいですね。
野菜や果物なら皮ごとです。皮には外界から身を守るための「ポリフェノール」が含まれています。これには「抗酸化作用」「創傷治癒作用」「抗菌作用」があります。

なぜ今ホールフードなのか?

ホールフードを食べることは、私たちの体に不足している栄養を補充してくれるだけでなく、残さず食べることによって食品ロスを少なくすることにも繋がります。
私たち人類は植物や動物から命を頂かなければ生きてゆくことができません。それを当たり前と思って、食べ物をおろそかにすれば、病を抱え込んでしまいます。
地球上の生きとし生けるものに対する感謝の気持ちが、ホールフードという食べ方を生みました。環境を守り、家族を守り、あなたの健康を守るためにも、ぜひ始めてみてください。

著者プロフィール

南雲吉則(なぐもよしのり)

1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。

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