私が卒業した東京慈恵会医科大学のチームが「日本人の98%はビタミンD不足」というショッキングな調査結果を発表しました(The Journal of Nutrition, Vol153, 4, p1253)。
調査対象は2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人。
算出した血中ビタミンD濃度は女性 7–30 ng/mL、男性5–27 ng/mLと、日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱する基準濃度30 ng/mL以上に達していないことが判明しました。
https://medical.jiji.com/topics/3077

実は私も2019年12月に出版した「病気が逃げていく!紫外線のすごい力」のp30で「当院の乳がん患者さんの98%がビタミンD不足」という調査結果を報告しています。
両者の結果数値がピッタリ一致したことは驚きですが、私にとっては至極当然の感があります。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0787105

この30年間に日本のがん死亡率は2倍になりましたが、欧米ではすでにがん死亡率は減少し続けています。その違いは何なのか。医療水準が低いわけではありません。
がんは生活習慣病ですので、生活習慣の何が違うのか考えた結果たどり着いたのは日本の「美白ブーム」です。
欧米人に比べて極端な紫外線対策している日本人は血中のビタミンD濃度が不足しています。
2014年ふたつの権威ある医学雑誌に、ビタミンDとがん死亡率との関係を調査した研究結果が報告されました。

一つの研究では、ビタミンDが足りない人はがん死亡率が1.7倍になるというのです(BMJ.2014 Jun 17)。
もう一つの研究では、ビタミンDが十分に足りていれば乳がん死亡率が0.58倍に減少するというのです(Eur J Cancer. 50(8):1510.2014)。
ビタミンD不足のがん死亡率が1.7倍ということは、ビタミンDが足りていれば1÷1.7倍になるはずです。そこで計算してみました1÷1.7=0.58。
医学の世界では一方の研究者がある発表をすると、もう一方の研究者が正反対の意見を述べるのはよくあることです。
ところが異なる研究者が異なる学会誌に、それも同じ年にぴったり一致した調査結果を発表したのです。これはもう反論の余地がありません。
日本の国立がん研究センターも血中のビタミンD濃度が上昇するとがん罹患率が減少する、という調査結果を報告しています。
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8099.html

世界で最も信頼されている医学雑誌Natureも、これまでの論文をレビューして、紫外線不足による血中のビタミンD不足が、
肝臓、腎臓、心臓、脳、消化器、呼吸器、感染症、妊娠中毒症、骨粗しょう症、膠原病、
そしてがんといった全身の健康被害をきたしていることを警告しています(Nature Reviews Endocrinology Vol.7, p73-75(2011)。

なぜビタミンがこれほど全身の細胞臓器に影響を与えるのか調べてみると、なんとビタミンDはビタミンではなくステロイドホルモンだったのです。
通常のビタミンは細胞膜の受容体に結合して細胞内に指令を出しますが、ステロイドホルモンであるビタミンDは容易に細胞内にさらに核の中にまでも侵入して、遺伝子に直接働きかけるのです。

越智小枝、慈恵医大教授は「都市部の生活では日光を十分に浴びるのは難しい。食生活も欧米化しており、不足している場合はサプリメントで取り入れてほしい」と語っています。

私は日本人のがん死亡率を半減させるために、美白ブームを1日でも早く終わらせたいと願って、2025年大阪万博に向けて「太陽のプロジェクト」を開始しています。

YouTubeはこちらをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=jXrn0NH-4U0&t=84

著者プロフィール

南雲吉則(なぐもよしのり)

1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。

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