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「冷え」は2種類ある
冷えに悩む人は、とても多いものです。とくに女性と高齢の人に多く見られます。手先が冷たくて、夜なかなか眠れないと悩んでいる人も多いでしょう。
では、冷えとは、いったいどんな状態なのでしょうか。
冷えには2種類あります。一つは「冷え性」。冷え性の「性」は、「心配性」の「性」です。外気に触れている手足が冷たくなるのは生理的なことで、病気でもなんでもありません。しかし「体が冷えると風邪を引く」「冷え性の人は免疫力が低い」「冷え性の人はがんになりやすい」などの誤った情報を信じて、体を温めるグッズが離せない人です。
もう一つは「冷え症」。栄養失調や慢性病で体温を上げることができず、低体温症で全身の臓器がきちんと働かなくなった状態です。
「私は平熱が低いんです」という人がいますが、それは体温の測り方が悪いのです。水銀体温計よりも電子体温計、脇の下よりも鼓膜温を測れば正確な体温を知ることができます。ほとんどの人の鼓膜温は37度前後です。
体を温めたいなら冷やしなさい
冷え性であれば、足が寒くても病気になることはありませんが、もし足を温めたいなら「プチ水シャワー」をお勧めします。お出かけ前や寝る前に風呂場で膝から下に冷たい水を数秒かけるのです。その後、乾いたタオルでよく拭くと、あらあら不思議、足先がピンク色になってポカポカしてきます。
「そんなわけがない」と信じない人がほとんどですが、冷たい水で洗い物をしたり、雑巾掛けをしたりしたことはないですか。手が痺れるほど冷たい水で作業した後は、手の平がジンジンとしてピンク色になるでしょう。これを「霜焼け」といいます。冷やしたことによって指先の血管が収縮して放熱を防ぎ、作業後は血管が拡張してジンジンするのです。このときに反動で手が温まります。
足が冷え性の方は思い切って冷たい水を数秒かけるだけで、反射が起きてポカポカ温まります。
外から温めるほど体は冷える
冷え性だから長風呂をする、厚着をする、使い捨てカイロが離せない人も多いですね。それで冷え性が治りましたか?治らないはずです。なぜならいくら外から温めても深部温度は上がらないからです。
もし外から温めて体温が上がるなら、熱帯に住んでいる人はみんな高体温です。また北極圏に住んでいる人はみんな低体温で死んでしまうでしょう。でも地球上どこに住んでいても人間の体温は37度です。それは体温調節中枢があるからです。気温が高ければ毛穴が開いて汗を蒸発させて体温を下げようとします。また気温が低ければ細胞内のミトコンドリアが酸素と一緒に脂肪を燃焼して深部体温を上げるのです。
ですから長湯や厚着で外から温めるほど深部体温は下がり、脂肪は燃焼しないので太ります。むしろ湯上がりには肘から先、膝から下に冷たい水をさっとかけて上がれば体温調節中枢が働いて深部体温が上がります。
体を温める他の方法
体温を上げるためには、ミトコンドリアが酸素と一緒に脂肪を燃焼すればいいのですから、水シャワーの他には、有酸素運動と空腹があります。
息をこらえて行う筋トレは無酸素運動ですので脂肪は燃焼しません。息が上がらない程度の散歩を一日30分。良い姿勢で深呼吸するのもいいですね。
白米・パン・麺をやめて穀物なら雑穀玄米。赤肉や青魚や緑黄色野菜ならお腹いっぱい食べても血糖値が上がらないので脂肪が貯まりません。間食をやめてお腹がグーッと鳴れば脂肪が燃焼し始めますので冷えの予防になります。
湯上がりのプチ水シャワーと糖質制限と有酸素運動によって、ミトコンドリアモードになれば、酸素と一緒に脂肪が燃焼して、ダイエットになり、冷え性が治り、がんの予防にも効果的です。ぜひお試しください。
著者プロフィール
南雲吉則(なぐもよしのり)
1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。
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