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「冬になると肌が乾燥する」のは勘違い

「洗顔後に肌が突っ張る」「脚に粉が吹く」「全身がカサカサして痒い」「爪の周りや口角がひび割れて血が出る」など、乾燥肌の悩みはとても多いですね。
「冬になると空気が乾燥しているのだから肌が乾燥するのは当たり前」「ヒビ、アカギレは体質」そう思っていませんか?
私もかつてはそう信じていました。ところが皮膚科学を学んでからは、そんな思い込みが吹っ飛んでしまったのです。

皮膚は乾燥しないようにできている

私達の体の細胞内の水分は常に一定に保たれています。
空気が乾燥しているから、喉が渇いているからといって、細胞が干上がったり、血液が減って血圧が下がったりしたら、地球上の生物は生き延びて行けないからです。これを「恒常性」といいます。そのために、細胞内の水分が失われないための機構が働いています。それが「経皮水分蒸発量調節」です。
皮膚表面には「皮脂膜」「角質」があり、角質内には「天然保湿因子」、角質周囲には「角質細胞間脂質」があります。これらは水分の蒸発を防ぐとともに、外敵から身を守り、菌やウイルス、寄生虫、アレルギーの抗原の侵入を防ぐバリアとなっています。

角質はレンガのように積み重ねられている

角質は体毛や爪、動物でいえばツノやウロコやクチバシのように死んだ細胞でできていて、主成分は「ケラチン」というタンパク質です。
角質内には天然保湿因子としてアミノ酸があり、乳酸や尿素も存在します。これらは吸水性で角質の20−30%の水分を保持しています。この水分が20%を切ると「乾燥肌」になるのです。
角質はレンガのように規則正しく積み重ねられています。その隙間を埋めるセメントが角質細胞間脂質で、セラミドとコレステロール、遊離脂肪酸などの脂質でできていて水分は含みません。この脂質が減れば角質が剥がれやすくなります。

角質は脂質・タンパク質で繋ぎ止められている

これまでセラミドは単に角質細胞の間を埋める物質と思われていました。しかし近年、細胞間のシグナル伝達物質として働いていることが明らかになりました。具体的には肌の細胞の分化増殖や細胞死をコントロールしているのです。そのためセラミドが不足するとアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を起こします。
また角質細胞が崩れないように繋ぎ止めているのが「フィラグリン」というタンパク質です。これが不足すると角質の配列が崩れて、皮膚の水分が失われて、外敵が侵入しやすくなります。

皮膚のバリアを壊しているのは合成界面活性剤

このように皮膚は常に水分を保持しているため、入浴ができないような環境に住んでいる人に「乾燥肌」は存在しません。
私たちが洗顔入浴後にあれだけ化粧水や乳液・クリームを塗っても、乾燥肌で苦しんでいるのは、洗いすぎが原因です。
皆さんはシャンプーで顔を洗ったり、ハンドソープで髪を洗ったりしませんよね。それぞれの洗剤は髪や顔や体の皮膚に特化した成分が入っている、と思い込んでいるからです。
しかし裏の成分表を見てください。全て「ラウレス硫酸ナトリウム」と書いてあります。つまり容器や色や香りを変えているだけで、洗剤成分は皆同じなのです。

体に使っている洗剤と食器洗いの洗剤は同一のもの

さらにこのラウレス硫酸ナトリウムは、なんと食器洗いや衣服洗剤の「アルキルエーテール硫酸エステルナトリウム」と全く同じ物質なのです。つまり皆さんは食器洗いの洗剤で髪や肌を洗っているのです。
素手で食器洗いをするとヒビ、アカギレを起こしますよね。合成洗剤は強力な殺菌性、言い換えれば細胞障害性を持っていますので、皮膚のバリアが破壊されて、保水性を失い、菌が侵入するためです。
いくら乳液・クリームで補修しても、所詮ベビーオイルやワセリンは「ミネラルオイル」すなわち石油から生成した油ですから、皮脂やアミノ酸のような親和性・機能はありません。

純石鹸を使うようになって変わったこと

長い間、乾燥肌に悩んでいた私は、そのことを知ってから、純石鹸を使うようになりました。「シャボン玉石鹸」という液体の純石鹸をポリタンクで購入して、シャンプーやハンドソープ、ボディソープの容器に詰め替えて使用しています。それどころか、食器洗いや洗濯にもこの液体石鹸を使用しています。
これまでのように何種類もの洗剤を購入し、詰め替え用も購入することがなくなったので、驚くほど出費が減り、洗剤が切れる心配もなくなりました。
純石鹸を使えば食器洗いをしても手が乾燥することはありません。入浴時もナイロンタオルやスポンジを使用せず手の平で撫で洗いをしていますので、乾燥肌も完全に治りました。

肌と自然の環境を守り、家計を守る

川や海が汚れていると心が痛みます。原因は工業廃水かと思っていましたが、なんと環境汚染の4分の3は私たちの生活排水によるものだそうです。
その内訳はトイレ、風呂、食器洗い、洗濯がそれぞれ4分の1を占めています。
合成洗剤をやめて純石鹸だけの生活になれば、生活費を削減でき、生活はシンプルになり、環境は汚染しなくなり、そして乾燥肌も治るのです。
家計を守り、大切な家族の健康を守り、自然の美しさを守り、そしていつまで若々しい肌を守るためにも「石鹸生活」を始めませんか?

著者プロフィール

南雲吉則(なぐもよしのり)

1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。

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