私達の体の60%は水でできています。その水を補うため毎日1リットルの水を飲まなければなりません。もし飲んでいる水が汚染されていたら、健康に生きてゆくことは不可能です。
そこで飲み水の安全性ついて解説しましょう。
私達の身の回りにはさまざまな飲み水があります。

目次

井戸水

水道が全国に普及するまでは飲料水として用いられていました。しかし井戸水には法的水質基準はありませんので、必ずしも安全とはいえません。コレラや赤痢などの水系感染症の原因となり、また日本人に胃がんが多かったのは井戸水によるピロリ菌感染が原因ともいわれています。

水道水

ダム湖や河川の地表水を浄水・殺菌したものです。水道法では51項目もの厳格な「水質基準」が定められています。世界でも水道水をそのまま飲める国は、日本を含めて、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、フィンランド、ドイツ、オーストリア、デンマークの8か国しかありません(国土交通省「令和元年版 日本の水資源の現状」による)。しかし近年、消毒に用いられている塩素から生成される「トリハロメタン」には発がんの可能性があるといわれています。そのため浄水器やミネラルウオーターの水を飲まれる方も多いのではないでしょうか。

浄水器

広く普及している浄水器には、実は効果効能をうたえる規定はありません。そこで経済産業省は「家庭用品品質表示法」にもとづく「品質表示」を2002年4月に始めましたが、これは出荷時の性能です。経年劣化やフィルターの交換不足により安全性は著しく低下します。またあとで述べる発がん性物質・硝酸態窒素は「逆浸透法」という方法でなければ除去できません。

ボトルドウオーター

ペットボトルやウォーターサーバーのボトルに詰められた水です。食品衛生法によって14項目(殺菌工程ありの場合39項目)の「食品、添加物等の規格基準」が定められていますが、水道法よりは緩い基準になっています。ミネラルウォーターは地下水で、ミネラルが豊富なものは硬水、少なめのものは軟水と呼ばれます。飲料水に適した酸性度は弱アルカリ性です。いくつかの水源から取水されたものを混合したり、ミネラルの量を調整したりしている場合があります。それに対して水源は一つで無調整のものをナチュラルウォーターといいますが、ミネラルを含んでいない場合もあります。ミネラルを含みナチュラルのものをナチュラルミネラルウォーターと呼びます。

最も重要なのは硝酸態窒素の有無

私は10年以上前から「硝酸態窒素」の危険性を訴えています。これは窒素肥料として使用される硝酸アンモニウムや硝酸ナトリウムのことを指します。土壌の硝酸態窒素は地下水や河川に流れ込みますが、安定性の高い物質であるため、浄水や熱では分解されません。そのため水源を選ばないと水道水やミネラルウォーターにも含まれることになります。私のクリニックは東京・名古屋・大阪・福岡にあり、または講演で全国を飛び回っています。そこで全国各地の水道水や湧水、ミネラルウォーター中の硝酸態窒素含有量を試験薬で調査しました。その結果、ほとんどの水道水やミネラルウォーターに基準ギリギリの硝酸態窒素が含有されていることが判明しました。

硝酸態窒素の毒性

2021年10月19日、群馬大医学部附属病院(群馬県前橋市)に入院する乳児10人がメトヘモグロビン血症を発症し、呼吸困難になりました。その後の調査で院内の水道水(浄水した井戸水)から基準値の12000倍の硝酸態窒素が検出されたのです。硝酸態窒素を摂取すると体内で腸内細菌によって亜硝酸態窒素に還元され、これが吸収されて血液中のヘモグロビンを酸化して酸素を運ぶことのできないメトヘモグロビンを生成するのです。
また亜硝酸態窒素は胃内のタンパク質に含まれるアミン類と結合して、強力な発がん性物質「ニトロソアミン」に変化します。

奇跡の水があった

市販のミネラルウォーターのほとんどが基準値ギリギリの硝酸態窒素を含んでいることがわかってから、安心して飲める水がなく途方に暮れていました。そんなときであったのが島根県金城町の水です。ペットポトルのラベルに非加熱のナチュラルミネラルウォーターで硝酸態窒素ゼロと書いてあるので、早速試験薬で試してみましたが、全く含まれていませんでした。妊婦さんや小さなお子さんのいる家庭ではこのお水を試してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

南雲吉則(なぐもよしのり)

1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。

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