今年も花粉症にはずいぶん苦しめられました。
毎朝テレビの花粉情報を見るだけで鼻がムズムズしたものです。

花粉症は免疫疾患です。花粉に対する抗体ができて発症します。
この抗体は「IgE」といって、そもそもは寄生虫に対する抗体です。IgEは肥満細胞という免疫細胞と合体しています。寄生虫を見つけると肥満細胞が「ヒスタミン」という炎症物質を分泌して、腸の粘膜をムズムズさせて腹痛や下痢を起こし寄生虫を体外に排除するのです。

戦後、寄生虫を持っていることが少なくなったので、余ったIgEが花粉を新たな外敵とみなすようになったのです。花粉が鼻に侵入すると同じようにヒスタミンを分泌して、鼻の粘膜をムズムズさせて鼻水やクシャミを起こし花粉を体外に排除するのです。
そこでヒスタミンの作用を抑える「抗ヒスタミン剤」が飛ぶように売れるのです。
花粉症の大半はスギやヒノキが原因です。サクラやウメは派手な色と甘い香りと蜜の味で虫をおびよせ、花粉を運ばせるので「虫媒花(ルビちゅうばいか)」と呼ばれます。スギやヒノキは花を咲かさず、風に花粉を運んでもらう「風媒花(ふうばいか)」なので、大量の花粉を撒き散らす必要があるのです。

花粉症の有症率は長野県が最高で39.1% 、沖縄県が最低で17.9% (1998年アレルギー性鼻炎全国疫学調査)、スギ、ヒノキの多い県で高くなっています。
花粉症が初めて報告されたのは1960年。「日光街道沿いの杉並木」で有名な日光市でのことでした。杉並木は17世紀前半に植えられたものですが、花粉症が発症したのは、日本人の寄生虫の有病率が5%を切ったときと一致しています。
以来、国民の花粉症有症率は1998年に約20%だったのが、10年に10%ずつ増加し、来たる2028年には国民の過半数が花粉症になると予測されます。
とお話しすると、皆さんうんざりした顔をなされますが、近年朗報がありました
2015年東大研究グループが行った群馬県での追跡調査で、花粉症の人は全疾患の死亡リスクが43%低く、がん死亡リスクは52%も低かったのです。
すい臓ガン、大腸ガン、食道ガン、胃ガン、口腔ガン、子宮体ガン、脳腫瘍などの発症リスクが低下するといわれています。
また2012年のオハイオ州立大学総合がんセンターの報告では、アレルギー抗体を持つ人は、20年後の悪性脳腫瘍リスクが50%も減少していました。
私はこの情報を知って以来、花粉症であることに鼻が高くなってムズムズするようになりました。

以上、ナグモクリニック総院長 南雲吉則による
「花粉症になってよかったこと」のご紹介でした!
この情報は南雲先生のYouTubeでもご覧になれるので、是非チェックしてみてください♪

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著者プロフィール
南雲吉則(なぐもよしのり)
1955年生まれ。慈恵医大学卒業、乳腺専門医、医学博士。バスト専門のナグモクリニック総院長として東京・名古屋・大阪・福岡で診療を行うかたわら、若返り・ダイエットのベストセラー書籍多数。分かりやすい解説が好評で、テレビ出演や講演に多忙な毎日を送る。近年は、がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。国内外の医科大学の客員教授、非常勤講師。

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